冬なのにナツヨムその1「ネコとカレーライス」

去年の夏、ナツヨムというフェアがありました。
 




それに存じ上げている書店員様方が参加していらっしゃいまして、

ならばと推し作品を読んだわけであります。感想をまとめようと思いつつ何だかんだでまとめられず今に至るわけですが、ようやくできました。




ネコとカレーライス


一冊目は藤野ふじのさん「ネコとカレーライス」。
 

素敵な公式ページだ!

 

 

カレーライスというのは沢山のスパイスを組み合わせて作られる料理です。故に味は繊細で、僅かな組み合わせの違いで大幅な変化が生まれる。

それをテーマとして取り上げただけあって、作中における様々な描写はとてもニュアンス豊かです。
ほんの少しの心の揺れ、すれ違い。そういうものが、しっかり描かれています。


人のいいところばかりではなく困ったところまで(嫌味なく)きっちり表現されるところ、怒るのが下手な主人公が、自分の内の感情と格闘する辺り。簡単に表しきれない心のプリズムを文章に移し替える手腕に唸りました。

 

カレー作りはとんとん拍子に進むわけではなく、試行錯誤を繰り返しながらも一歩一歩進む。カルチャースクールという舞台故に人同士の距離感もそうべたべたしたものではなく、こちらもじっくりことこと煮詰められていく。

だからこそ仕上げられていく味わいは深いものになり、番外編のちょっと切ない後味も美しく決まります。

恥ずかしながら僕はカレーについて疎く、登場するスパイスについてはしばしば全く知らないということもありました。

しかし、それらのスパイスはそれこそ魔法の言葉のようにきらきらと文中で煌めき、食べたことのないはずの味わいを確かに伝えてくれました。

知識のない人間に専門的な話を読ませるというのは難しいことなのですが、見事に成し遂げておいでだと感じます。

続編を念頭に置かず、しっかり物語は締めくくられました。
今後どのような物語を紡がれていかれるのでしょう。楽しみですね。

 

 

素敵な帯を見るのだ

こちらがナツヨム仕様の帯。

 



 

可愛い! 素敵! これは手に取りたくなりますよね~。