中国の論理 - 歴史から解き明かす

友人の作家さんが面白かったと仰っていて、手に取ってみました。再読。







著者は京都府立大学教授の岡本隆司先生。様々な著作で活躍されていますね。
中公新書らしからぬ帯の煽り方や、本文の出だしに!?となりましたが、そこはさすがの岡本先生、十二分の厚みを持った内容でありました。
実際そういう「歯応えのない本」に辟易している旨の記述もあり、学究としての心意気を感じたりも。


全ての大本である史記から振り返り中国の「歴史学」が持つ特性を解説しつつ、社会と政治の流れを概観。その中で育まれた「『士』『庶』が隔絶した社会構成と歴史認識」、あるいは「『華』『夷』という二元論に基づく世界観」を明らかにし、「かつて中華に属したことがあれば、そこに『中国』の領土主権がある」という領土認識の論理までが分かりやすく導き出されるのです。


元々大学の講義が元ということで、端々にとっつきやすさを意識した箇所がちりばめられていて、その辺りも楽しかったですね。
嗚呼史(欧陽脩という人の『五代史記』という本。論賛=編者のコメントの度に嗚呼! 嗚呼! と慨嘆するのでそんなあだ名がついたそう)の話とか、毎回真面目にノート取ってる女子学生がふふっとなるんだろうなあ。そういうの見えると「あっあの子可愛いな」ってなっちゃいますよね。きらっきらのザ女子大生より素敵ですよね。
……関係ないですねごめんなさい。ちゃんと講義受けろって感じですよねごめんなさい。

いやでも真面目な話、あとがきで「わかりにくいという評価が一番こたえる」と仰ってて。決して簡単ではない(簡単にしてはいけない)物事をなんとか分かりやすくしようと苦心惨憺する姿は、本当に立派だなあと。学者さんでもこんなに頑張ってはるんやから、大衆作家も頑張らんならんなぁという感じです。
 


中公新書発刊の辞「現代にあらたな意味を投げかけるべく待機している過去の歴史的事実もまた、中公新書によって数多く発掘されるであろう」を思い出す一冊でした。