拙者、妹がおりまして 6

馳月基矢さん「拙者、妹がおりまして 6」(双葉文庫)。







随分と前に読了し、感想を書きたいと思っておりましたが、ばたばたしていて延び延びになってしまいました。
シリーズの9巻が出ようかというタイミングで、ようやく書き記す次第です。



菊香さん! 素敵だ!

僕はこのシリーズに登場する菊香さんという登場人物がとても好きでありまして、今回の活躍ぶりはというとアアア! 一話からいきなり万葉集の歌をさりげなく引用している! 深い教養! 素敵だ!
しかも普段とは違う「お節介でお転婆」な姿! 素敵だ! 弟想いで! 素敵だ!


……このままでは菊香さん素敵だ! だけで感想が終わってしまうのでこのくらいにしておきまして。

本巻では、今までに登場した人物たちの物語をより掘り下げて読むことができたと感じました。
出して出しっぱなしにはしない、長期シリーズならではの醍醐味が感じられます。


おえんさんであったり、琢馬であったり、様々に苦悩したり苦労したりしてきた人たちの新しい物語には、じんとさせられました。
それはとってつけたものではなく、「拙者」であるところの勇実や「妹」である千紘、あるいは周囲の人たちが動くことによって紡がれています。人情とか、優しさとか、表現する言葉は沢山ありましょうが、人と人の繋がりが人を前に進ませるというごく当たり前のことが丁寧に描かれているのですね。



みんなそれぞれ愛おしい


千紘殿は今回も元気いっぱいに活躍するわけですが、ひたすら飛び回るだけではなく、スリにあってとても動揺するなんていう場面もあります。
実のところ、これは珍しいことではなくて。なるほど彼女は明るくお転婆ですけれど、その一方でとても繊細でもあるんですよね。さりげなくも奥深いところ。




繊細と言えば、琢馬と大いに関わる燕助の悩みの描かれ方もそう表現できましょう。これは本当に芸事に携わる人間の葛藤としては切々たるもので、胸の痛むところでありました。
それ故に、後の巻で彼が道を見出した姿には本当に嬉しい気持ちになってしまいましたね。


あとはそうですね、主人公・勇実の筆子たちの中では淳平くんを大変応援してしまうわけでして。そんな彼がちらりと登場したところが嬉しかったです。
とある腕の立つご隠居様にひたすらほいほい投げられてるだけのことですけれども、子供らしい子供として過ごせていて良きかな良きかな。
一緒になって投げ飛ばされてる寅吉もね……。君は子供じゃないはずだけどね……まあたんと投げ飛ばされるといいよ……。



といった感じわけで語り出すときりがないわけですけれども、あとはそうだなあもう一つくらいは触れておきたいなあとページをめくっていたらウワアアア! 菊香さんが! いたずらっぽくちろりと舌を出している! 可愛い! 素敵だ!(結局そうなる