井上雅彦さん監修「異形コレクション ヴァケーション」。
ションで韻を踏んでてクールですね!
まさしく腕の見せ所
ホラーと休暇。まえがきでも触れられている通り、
映画「ミッドサマー」(最東対地さんの企みで僕も友人らと観に行く羽目になりました)が用いた組み合わせであり、一見テーマとしては王道であるかのようにも思えます。
しかし、本来的に言葉が湛えている空気は正反対です。水と油といっても良いのでは。
しかし。本作においては、それらが見事に料理されています。
ストレートに休暇や旅行を取り上げる人もいれば、「バケーション」という言葉にひねりを加えて自分の世界を構築する人も。錚々たる面々だけあって、様々なアプローチを楽しめることができます。
ミッドサマーつながりで最東対地さんを挙げますと、彼は自分の世界型の極北みたいな仕上がりになっております。まさかこのテーマからこんな話が出てくるとは。
一方でただ変なことを変にやっただけではなく、様々な試み(意識している部分でももしかしたら無意識の部分でも)に取り組んでいて
ラストの締めくくり方などは、最東対地読者の方なら共感頂ける部分かと思いますが、おそらく新境地ではないでしょうか。一作一作を糧として生かす作家は強いとどなたかに伺った覚えがありますが、そのお言葉を想起したりもしました。
神々は細部に宿る(多神教)
もう一つ、一冊を通して読んで感じたのが「ディテール」でした。
物語として、ホラーとして、当然主眼は存在するわけですが、
それを補強するために、あるいは副旋律として思うところ感じるところを織り込むために、細部を描き込むわけです。そこの違いというものも、
「物語を生かすためにしっかり書かれているのだな」というもの、「あえてこれを書くのはこだわりなのだろう」というもの、「さりげないけれどここは意識的なのかもしれない」というもの……競作だからこその色とりどりさで大変興味深かったです。
もう一度最東さんの作品を例として引きますと、作中ゴリゴリと挙げられる「映画」でしょうか。彼自身が映画を頻繁に観ていることを知っているからかもしれませんが、大変印象に残るものでした。しかも頭かち割られて死ぬタイプの映画ではないですからなおのこと。
今回も面白かったです
一冊を通しての話が主になってしまいましたが、一作一作がいかなるものであるかについては井上さんが充実した解説を冒頭に付してくださっておりますので、是非そちらを読んでみてくださいませ。
コレクションの話はそれを作り上げたコレクターに聞くのが一番ですよ!