我孫子武丸さん「監禁探偵」(実業之日本社文庫)。
単行本で読みまして文庫で再読。
表紙における監禁探偵・アカネは、単行本と雰囲気が違いますがやはり蠱惑的。ツインテールが大変ヤバいですね!
実際、彼女の魅力はこの物語を強く牽引する要素だと思います。
妖艶というにはいとけなさが混じっていて、可愛いというには危うすぎる。コケティッシュさを纏いながらも、あと一歩で手が届かない。
彼女と出会った男性二人が彼女について語る場面で、同じように彼女について語っているのにその語り口が全く別で、それはそれぞれの業のようなものが引き出されているかのようでもありました。
などと友人たちの集まりで話していたところ、とある作家さんに「二人は出会い方も違うからね」という指摘を受けて、なるほどとなったりも。確かにそういう見方もできそうですね。
出会い方、という点では文庫で収録されているショートストーリーにおける彼も異なるわけで、おそらく彼にとってのアカネもまた少し違う姿に映っているのかもしれません。素敵な女の子ってそういうものなのかもしれませんね。
ちなみにこの掌編、どんでん返しのキレもお見事です。我孫子さんご自身も手応えを感じたというこの掌編、単行本でお持ちの我孫子武丸ファンも読む価値ありですよ。
さてアカネの話ばかりしておりますが、まあアカネの話ばかりしてしまうわけですよ。要するに僕自身も同様にまいってしまっておるわけですね。改めて読んで、どうなるか分かっていてもやはりハラハラしてしまいました。
作品の骨格については、大山誠一郎さんによる見事な解説を読めば一目瞭然ですしね。僕にできることといえばアカネの話をすることくらいです。ワハハ。ワハハではない。
勿論小説としてとても面白いです。これは間違いありません。仕掛けを避けつつ話すのが難しいところですが、その仕掛け自体が物語とそしてアカネに奥行きを齎しているのですよ。しまったまたアカネの話になってしまった。